場所性から導かれる建築
海辺のすみかは、沖縄県読谷村に建つ家族4人のための住宅である。
敷地は西海岸の風光明媚な集落の中に位置し、
海辺という立地ではあるものの、グラウンドレベルから海を望む事は
出来ない環境下にあった。
家族は趣味のマリーンスポーツが楽しめる土地を探して辿り着いた
この場所で、海面が移り変わる表情や潮風を感じながら
過ごす事ができる日常と、家族が寄り添いながら時間を共有できる暮らしを望まれた。
計画は家族が望む暮らしを可能とするプログラムを構築すると同時に、
この場所が持つポテンシャルを最大限引き出す建築手法について
検討を重ねた結果、
井桁状の構造形式による空中の平屋的空間構成に至った。
また、漁港やその先の東シナ海まで望める高さで決定された
建築の骨格は4本の柱によって支持されており、
下階(基礎面積)を最小限に留める事でコストへの対応を図りながら、
上階は4辺均等に持ち出された構造形式によって
生活の機能が集約されている。具体的には、生活の殆どの機能を配置した
上階は、リビングダイニングを中心に居室やテラス、
さらには緑のボイドが取り巻くように構成され、
南西側に広がる海側の風景を享受しながら開放的な空間へと導かれる。
下階の必要最小限に留めたヴォリュームによって生み出された
大きな軒下空間は、家族が希望する屋根付きのガレージや
ライフワークスペースといった半屋外の機能も兼ね備えた。
これは亜熱帯気候という厳しい環境への対策を講じる目的と同時に
密度の高い周辺環境に対して、グラウンドレベルを大きく開放する事で
公の場が拡張するような場の状態を創り出す事を意図している。
海辺のすみかは、まさに場所性から導かれた建築であり、
下階の軒下空間では子供たちが縦横無尽に遊びまわり、
上階では彼方へと広がる水平線と対峙しながら
豊かな暮らしが育まれている。